めまいと一言で言っても沢山の原因がありますが、日常診療で一番見かける良性発作性頭位めまい症について説明します。「頭位性」めまいとは、例えばベッドに横になったときや首を回したときなど、頭の位置を変えたときに回転性めまいが起こるという意味です。
「良性」とは、この病気が危険なものではないという意味です。
この病気の発作の大部分は、典型的には朝目覚めて最初に寝返りをうったときや、棚の高いところに手を伸ばそうとして頭を後ろにのけぞらせたときなど、頭の位置を変えたときに引き起こされます。
良性発作性頭位めまい症は通常、正常であれば内耳の一部分(卵形嚢と球形嚢)に収まっているカルシウムの粒(耳石)が、そこから剥がれて内耳の別の部分(後半規管が最も一般的)に入ったときに生じます。
内耳には3つの半規管があり、これらは平衡感覚の維持に関与しています。
そのうち後半規管は、上半規管(前半規管とも呼ばれる)や外側半規管と異なり、剥がれた耳石が就寝中に重力によって最も入り込みやすい位置にあります。耳石がたまると粉っぽい泥状になり、それによって、頭の位置を変えたときの後半規管の中にある液体の動きが大きくなります。
その結果、後半規管の中にある神経受容体(有毛細胞)が過剰に刺激され、動いたり回転したりしているような感覚が生じます。
良性発作性頭位めまい症を怖れたり不快に感じたりする人もいますが、通常は無害で、簡単な運動で消失するか自然に消失します。
回転性めまいは、ベッドで寝返りをうったり、何かを拾おうとして腰をかがめたときなど、頭が動いたときに引き起こされます。回転性めまいの発作は、1度につきわずか数秒から数分で治まります。
数日から数週間の間に何度も発作が起きることがあり、発作はその後徐々に自然になくなっていきます。
回転性めまいの際に、吐き気や嘔吐、特定のタイプの眼振(眼球が一方向にすばやく動いてから、それより遅い動きで元の位置に戻ることを繰り返す現象)が伴うこともあります。難聴や耳鳴り(耳鳴)は起こりません。
必要なのは、ただ耳石を後半規管から症状を引き起こさない場所に動かすだけです。そのためには、頭をとんぼ返りのように動かすことが必要で、これは浮遊耳石置換法と呼ばれ、具体的にはエプリー法などがあります。
約90%の人は、この手技によって回転性めまいがすぐに改善します。繰り返せば、さらにもう少し多くの人で効果があります。
回転性めまいが再発する人もいますが、その場合はこの手技を繰り返し行います。めまいがするからと頭を動かさずに安静にしていると症状が軽快しません。
良性発作性頭位めまい症の影響を最も受けることが多いのは後半規管ですが、ときに外側半規管が影響を受けることもあり、その場合患者は丸太のように体を転がすことで症状を軽減できます。
耳石置換法で効果がない場合、めまいの他の原因を精査する必要があります。
エプリー法は、下の図の赤い矢印に従って時計回りの順序で行ってください。